ムーブメント
精巧なタイムピースを愛する人たちは、アトゥムに搭載されたキャリバー100.1においても総合芸術と評されるべきその姿をシースルーバック越しに眺めることができます。微妙なバランスを形作る個々の部品は洋銀でそれぞれ違ったタイプの仕上げです。このムーブメントは、グラスヒュッテ式クロノメーター懐中時計を受け継ぐ支柱構造で、2本の支柱と香箱受けが地板と3分の2プレートを正確な間隔でつないでいます。盛り上がったゴールドシャトンやシャトン用の平型ネジが立体的なアクセントを添えます。ムーブメントの奥におさまる輪列歯車やレバーやバネのエッジの面取り部にも手作業でポリッシュ仕上げがほどこされ美しい輝きで満ちています。
また技術革新の数々も注目に値します。使いやすさや機能的な信頼性を向上するため、新しく考案されたグロスマンの完全自社製テンプと改良されたグラスヒュッテ式コハゼ装置によってグロスマン製プッシャー付き手巻き機構が入るスペースが生まれました。
グロスマン製テンプ
「アトゥム」は、伝統的な振動数18,000振動/時で穏やかに時を刻みます。そのキャリバー100.1には、新たに設計されたグロスマン製テンプが搭載され、精度というものがもっぱら高振動で達成されるわけではないことを証明しています。テンプは職人がテンプの慣性モーメントを理想的に調整し、空気抵抗を最小限に抑えて、できるだけ小さな質量で大きな運動エネルギーを引き出せるように設計されています。テンワのネジの数もできるだけ減らしています。頭の高さが異なる質量ネジで慣性モーメントを古典的に変化させています。質量をできるだけ外側に持ってくるためテンワの直径を大きくしました。テンワには等間隔で穴が開けられており、必要に応じてこれを削って質量を減らし、テンプのバランスを取ります。円筒形の滑らかな天真はテンワにはめ込まれており、必要であれば簡単に交換することができます。グロスマン製テンプに使われているのはニヴァロックス・ヒゲゼンマイで、内側に4分の1の円弧で曲げられ、割目の入ったヒゲ玉に真鍮ピンではめ込まれています。
グロスマン製プッシャー付き巻き上げ機構
手巻き時計の場合、毎週のように針合わせをしなければなりません。この操作をできるだけ手軽にまた機能的に確実に行えるように、グロスマンの時計師は新タイプのグロスマン製プッシャー付き手巻き機構を考案しました。リュウズを引き出すと針合わせファンクションに切り替わり、ムーブメントは停止します。リュウズはすぐに元の位置に戻りますが、そのまま針を正確に合わせることが可能です。針合わせの後、その下のプッシャーを押すとムーブメントは動き出し、リュウズを動かす必要はありません。また同時に、ファンクションは元の巻き上げ用に切り替わります。この見事な機構によって、針を合わせている間にケースに埃が入ったり、リュウズを押し込む際に針の位置が変わってしまったりというトラブルも防げるのです。
3段のサンバースト模様
丸穴車には歯に面取りとポリッシュ仕上げがほどこされ、特別な輝きを放ちます。伝統的な3段のサンバースト模様が最も大きい角穴車を飾り、幅広のグラスヒュッテ・ストライプ模様やフリーハンドで彫られたエングレービングとともに美しい調和が生まれます。
ゴールドシャトン
目を引くゴールドシャトンには受け石のホワイトサファイヤが埋め込まれています。ゴールドシャトンは、焼き戻しでブラウンバイオレットに発色した平型ネジで固定されプレートの表面より盛り上がっています。この一段高くなったスタイルは、グロスマンの歴史的な懐中時計にヒントを得たものです。このようなシャトンを用いると、受け石だけを取り外して清掃することができ、再び装填する際にプレートを傷つけるリスクを避けることができます。
ハンドエングレービング
3分の2プレートとテンプ受けのエングレービングや刻印はすべて手作業で彫られます。
技術仕様
ムーブメント
自社製キャリバー100.1、手巻き、5姿勢調整
特徴
グロスマン製テンプ、針合わせファンクション解除・時計リスタート用プッシャー、小型化したグラスヒュッテ式コハゼ装置(改良型戻し機能付き)、段差式テンプ受け、グロスマン製精密調整ネジによる緩急調整装置、表面処理をしない洋銀の3分の2プレートおよび支柱構造、3分の2プレート・テンプ受け・ガンギ車受けのハンドエングレービング、幅広いグラスヒュッテ・ストライプ模様、3段のサンバースト模様で装飾された角穴車、平型ネジ留め式の盛り上がったゴールドシャトン、個別に取り外し可能なクラッチ式巻き上げ機構、針合わせ用ストップセコンド機能
機能
時、分、ストップセコンド機能搭載スモールセコンド
グロスマン製プッシャー付き巻き上げ機構
部品数
198個
石数
20石(うち3個はネジ留め式ゴールドシャトンに使用)
脱進機
アンクル脱進機
調速機
質量ネジ4本および調節ネジ2本を装着した耐震軸受式グロスマン製テンプ、ニヴァロックス1ヒゲゼンマイ(ブレゲタイプ80番、グスタフ・ゲルステンベルガー案に基づく)を下側に設置
テンプ
直径14.2mm テンプ振動数: 18,000振動/時
パワーリザーブ
完全巻き上げ状態から約42時間
操作
リュウズ 18K ゴールド(巻き上げおよび時刻設定用)、プッシャー18K ゴールド (時計スタート用)
ムーブメントサイズ
直径36.4 mm、厚さ5.0 mm